最も普通にとれることから「漁(あさ)る」が名前の由来であるといわれています。
戦前までは東京の深川、大森海岸や神奈川の金沢文庫、千葉の稲毛などの砂浜でいくらでもとれた貝で、その当時、地元の漁民が江戸前のアサリを味噌仕立てで煮て熱いご飯の上にのせて食べていたものが「深川飯」として今も残っています。潮干狩りの貝としても有名ですが、海浜の埋めたてなどにより、貝類の住処も次々とうばわれつつあるのは残念です。「浅蜊」「浅蜊汁」「浅蜊とり」など、いずれも春の季語として使われているように、シジミとともに日本の暮らしにとても密着した貝といえます。


殻は卵円形、左右によく膨れています。殻長4cm、殻高3cm、殻幅2.5cmくらいの大きさ。殻表にきわめて密に放射状脈と成長脈が交わって布目状になっています。ザラザラしていて、白色に褐色班があるが、外面模様、色彩は変化に富んでいますが山形模様が基本のようです。色は貝が若いものほど鮮明で、死ぬと茶褐色に変色します。


水温5〜35度の広い温度帯に適応し、分布は、日本近海では北海道から九州、さらに樺太、中国沿岸、朝鮮半島、台湾、フィリピンに至る広域にわたって生息しています。北アメリカ西岸、ハワイにも移入して繁殖しています。内湾の潮間帯から、水深10mほどの浅い海の砂泥底に生息して、ハマグリやマテガイ(馬刀貝)とともに潮干狩りの格好の獲物として人気があります。先史時代の重要な食料で、貝塚から多く殻が出土していることでも有名。
アサリは一年中出回っていますが、身の太っている冬から4月までが旬。10月頃には肉はやせています。東京湾、伊勢湾、瀬戸内海、有明海、八代湾などが主産地で、近年、都市開発や汚染が原因で生産量が減少してきています。アサリは昔から稚魚を漁場に運んできてまきつける方法がさかんに行われています。市場では、年間を通じて値段の変動があまりなく、殻つきのもの、むき身のもの、それらの冷凍物が全国各地に流通しています。


産卵期の6〜9月頃は有毒化することがあるので要注意です。殻付きは必ず生きているものを購入し、海水程度の塩水につけて砂を吐かせてから使うことが重要です。塩水につけても口を開かないものは死んでいるのでとり除きます。加熱しすぎると身がやせてかたくなり、うまみも半減します。調理の際は短時間の加熱を心がけてください。殻つきの場合は、口が開いたら火が通ったと見てかまいません。
●砂抜き:2〜3%の塩水に入れて、冷暗所に1日くらいおいて砂を吐かせます。水温が15度以下だと十分に砂を吐かないといわれています。


鉄に加えて貧血と関係の深いビタミンB12が非常に多く、貧血ぎみの人や低血圧の人、妊産婦には最適の食品です。ビタミンB12は肝臓の働きを活発にするためにも欠かせません。そのほか、たんぱく質、ビタミンA、B2、カルシウムなども期待できます。なお、ビタミンB1を分解するアノイリナーゼという酵素が含まれていますが、加熱するとその力はほとんど失われます。
効果的には体内の余分な水分を取り、利尿を促すとされています。また、虚弱体質を改善したり腰痛を緩和したりする効果もあるといわれています。貝類特有のうまみを出すコハク酸が多く、うまみの濃い貝です。



加熱して用います。酒蒸しや、汁物には殻つきを、ぬたなどのあえ物や、かき揚げ、つくだ煮アサリ飯などにはむき身を使います。白ワインで蒸し煮にしてアサリのワイン蒸しやサラダ、スパゲッティにも利用できます。

   ア サ リ の 雑 学