カキと並ぶ松島湾の名物ハゼ(マハゼ)。秋のハゼ釣りは、太公望が心待ちにしている松島湾の風物詩。成長したハゼを狙った釣り船で湾内は大賑わいとなります。ハゼの種類は多く淡水産と海水産を合わせると千種にも上るといわれています。その中で特にマハゼは大変美味しく、てんぷら種として有名ですが、湯あらい(湯引き)したものにからし酢みそを添えたものは絶品です。仙台や石巻では、焼きハゼが正月の雑煮のダシに使われ、また、佃煮は東京名物になっています。


頭は大きく、体は細長く、体長は25cmに達するものもいます。口は大きく、腹びれは合わさって丸い吸盤を作ります。背びれと尾びれには、数状の暗色点列があり、体色は淡灰褐色で、体側中央には不定形の暗色斑点が並んでいます。一般にいわれるハゼはマハゼをさします。


北海道南部から種子島、朝鮮半島、中国大陸北部の沿岸におり、近年は船底のバラスト水に交じって運ばれ、シドニーやカリフォルニアにも生息しています。内湾や河口域から外海の岩礁域まで見られます。宮城県では気仙沼湾、万石浦などの浅い内湾に生息しています。転石の下面や貝殻の内面、さらにはジュースの空缶内などに産卵し、雄が孵化まで保護しています。
一年中釣れる魚ですが、本来は9月下旬から真冬にかけての釣りものです。産卵は5、6月に主に河口付近で行われ、幼魚は9月になると海に入ってきます。したがって11月までは浅場で釣り、11月過ぎて真冬までは深場の釣りになります。女性や子どもでも釣れる最も大衆的な魚といえます。ただ、晩秋にとれる、老成した「落ちのハゼ」は味がよいといわれ珍重されています。幼魚はエビ、カニなどの小型甲殻類を食べていますが、成魚はゴカイなどをどんどん食べています。



小魚なので、揚げ物などは骨ごと料理するケースが一般的です。さしみ、椀だね、あえ物、天ぷら、南蛮漬け、さらに甘露煮、昆布巻きなどに加工される場合も。マハゼが何尾も縄に通して仙台雑煮のだしとして珍重され、高価に取り引きされています。ハゼを選ぶ場合は、体に光沢があり腹がしっかり張っているものを選ぶのがコツです。

   ハ ゼ の 雑 学