パリの町ではカキの季節になると、通りのそこここに、屋台が車を並べ、カキを立ち喰いでたべさせてくれる。パリっ子はワイン片手に殻つきカキをレモンに添えてすすり食べる。“海の産んだ美味の結晶”カキは磯の香りとほのかな甘みで海の便りを確かに伝えてくれています。
中国ではその昔「太真乳(太真とは楊貴妃のことで楊貴妃の乳の意味)」といって珍重し、ヨーロッパでは「海のミルク」といってその栄養価とおいしさを称えています。
ジュリアスシーザーが兵士の士気を奮わせるためにカキを食べさせた、とかドイツ宰相ビスマルクが一度に175個たべたのが最高だった、とか、英雄ナポレオンが大好物だったとか、無口で一度はりついた岩から一生動くことのないカキですが、世界中にエピソードが散らばっているようです。
日本にも古事記に、軽太郎女が木梨の軽太郎に贈った歌で、女性の愛情表現に、カキが重要な役目を果たしています。
夏草の 相寝の浜の 蠣貝に 足踏ますな明かして通れ
日本のカキ、中でも宮城のカキはマガキといって豊満な、ボッテリとお腹のふくれた種類で、とろりとした味わいはまさに逸品、ひと粒のかき物語に思いをはせて、思いきり賞味しましょう。
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