サケの帰巣本能についてはいろいろ研究が重ねられていますが、川水にとけ込んだ微妙な成分の違いを臭いでかぎ分けるのだろうというのが一般的です。この習性を利用して各地の川で「カムバックサーモン」運動が広がり、ふ化させた稚魚をさかんに放流しています。日本の川に戻ってくるのはほとんどがシロザケ。これがいわゆるアキアジで、その回帰率はわずか1%からせいぜい1.5%どまり。ギンザケなどは1年近くも川や湖で過ごし、成長してから海に出ますが、日本のような流れが急で短い川には上がってこないといいます。
サケが豊漁の年は凶作になりやすいといわれています。これはサケがいっぱいあがってくるのは親潮(寒流)の勢力が強いためで、ベーリング海などにいたサケがたくさん流れに乗ってくるからだろうとのこと。この年は稲作は冷害で凶作になるという北日本のいい伝えです。「サケ、マスの豊漁は早冷え」ともいわれています。
サケには銀、紅、白、とありますが、普通塩サケとして食べているのは白ザケです。この白ザケは6〜7月に海でとれるものが最もうまいといわれています。サケは生まれ故郷の川に帰って産卵しますが、川に入ると餌を食べなくなるので、急に脂がぬけてしまいまずくなってしまいます。うまいのは川にのぼる直前のもの。つまり7月の海でとれるサケが最高です。
サケが川をのぼる10月から11月半ばにかけて、宮城県の亘理、河北地方でよくつくられる郷土料理として「はらこめし」があります。これは、サケとサケの卵であるはらこ(イクラ)をごはんにまぜこんだとてもおいしい料理です。ところで、このイクラとスジコの違いはわかりますか。サケの未成熟卵をスジコ、成熟卵をイクラといいます。どちらもおいしいのは、いうまでもありません。
新巻のサケの中には川でとれたものも混じっています。ではどうすれば脂ののったおいしい新巻が買えるか。まず、銀色をしていることが重要。川に入るとサケの皮は茶色っぽくなり、光沢も落ちます。光っているのは川をのぼる以前のものといえます。また、味はメスよりもオスが良く、買うならオスに限ります。その見分け方は、オスのほうがけわしい顔をしています。メスの顔はどことなくやさしそう。そのやさしさにくれぐれもだまされないように…。